拠点形成プロジェクト

2026年度 教育プログラム開発型

理系研究室文化に基づく
日本語教育モデルの高度化と学内実装

プロジェクト代表者
藤平 愛美

大阪大学日本語日本文化教育センター・准教授

日本の理系研究室では、設備を利用する際の確認、実験の進捗に関する報告・相談、異常発生時の対応など、研究活動の安全性と円滑な遂行を支える多様な行動規範が共有されている。しかし、その多くは明文化されず、日常的な会話や実践を通じて暗黙のうちに継承されている。そのため、異なる文化的背景を持つ大学院留学生や外国人研究者にとって、研究室内で期待される行動やコミュニケーションのあり方を理解することは容易ではなく、研究環境への適応や研究活動への参加を難しくする要因となりうる。

本プロジェクトは、理系研究室における行動規範と言語行動との関係に着目し、研究室文化を学ぶための日本語教育モデルを高度化するとともに、大阪大学内での実装を進めるものである。これまでに開発してきた工学系・生物系のオンデマンド動画(VOD)教材と、学習者が実際に日本語を用いて課題に取り組む同期型授業とを組み合わせ、渡日前から渡日後まで継続して学べるブレンデッド型教育を構築する。さらに、化学系研究室を新たな調査対象に加え、工学・生物・化学の各分野における研究活動、行動規範、コミュニケーションの特徴を比較し、分野ごとの特性を反映した教材開発とコース設計を進める。

本プロジェクトの特色は、日本語教育を単なる語彙・文法や会話表現の習得としてではなく、日本の研究現場における文化的・社会的実践への参加を支える教育として捉える点にある。研究室内の言語行動は、情報伝達だけでなく、安全管理、協働、責任分担、報告・相談のタイミングなど、研究活動を成り立たせる規範と密接に結びついている。こうした「見えない行動規範」を教育内容として可視化・体系化することにより、これまで個人の経験や周囲との関係性に委ねられてきた適応過程を、組織的な教育支援の対象として位置づける。

2026年度から2028年度までの3年間を通じて、既存教材の改善、化学系を含む分野間比較、学内での試行的実施、教育効果の検証、渡日前教育への展開を段階的に進める。最終的には、理系研究科や附置研究所に所属する大学院留学生・外国人研究者が、研究室文化への理解を深め、研究活動により円滑かつ主体的に参加できる教育モデルを確立することを目指す。また、現代日本の研究室文化をグローバル日本学の対象として捉え、その構造を教育実践へ接続することで、異文化背景を持つ人材に研究室をひらく新たな日本学教育のあり方を提示する。

同期型授業の様子
講義動画撮影設備
プロジェクト構成員
学内 藤平 愛美 大阪大学日本語日本文化教育センター・准教授
小森 万里 大阪大学日本語日本文化教育センター・教授
加藤 均 大阪大学日本語日本文化教育センター・特任教授
松浦 幸祐 大阪大学日本語日本文化教育センター・助教
中谷 真也 大阪大学日本語日本文化教育センター・特任助教
Ciolca Raluca Maria 大阪大学日本語日本文化教育センター・特任助教
渡邉 あやめ 大阪大学日本語日本文化教育センター・特任助教
学外 Daengsubha Suwatana 泰日工業大学・日本語・国際ビジネス学科長
キーワード 理系研究室文化、日本語教育、行動規範、ブレンデッド型教育、異文化間コミュニケーション